「なっ、なにすんの!?」
急に生足を掴まれて脚を引っ込めようとする私に、彼はまた怒鳴る。
「いい加減俺の言うことをきけ! 早く処置しなければ、お前の血にあやかしがよる」
すごい剣幕に圧倒され、私は大人しく右ひざをたてた。
彼は懐から大きな布を取り出すと歯で引きちぎり、素早くキズ口を覆う。
「ああいう人の目には見えない下等なあやかしは、この森に数百といる。人の子の血が好物の、いやしいヤツらだ」
手際良く処置を進める彼の細い指に視線を落としたまま、私は黙りこくって聞いていた。
聞けば聞くほどぞっとする。
彼と顔なんて合わせられるわけもなく、身を縮めて俯いているしかない。
「俺がここに通りかからなければ、お前は食われていたんだぞ。言っておくが、俺の仕事はお前の“子守り”じゃない!」
彼の怒りに、私の体はびくりと跳ねて怯える。
耳が痛い。心が痛い。
彼の言葉は針の雨みたいに降り注ぐ。


