その唸りが早いか遅いか、地響きを起こしそうな低い声が絶叫する。
私はとっさに身を起こし、上を見上げた。
また、月のように冷たく光る刃が、美しい弧を描いていた。
あの日と同じ私のように、彼の顔をただ仰ぎ見る私。
安堵の涙が頬を、音もなく伝う。
どんな闇の中でも不思議と煌めいて見える、闇より暗い黒い瞳、黒い髪。
白っぽく闇に浮き上がる、つややかな着物。
彼に、紫希に、また助けられた、あの日のように。
「森に入るなと言ったろ」
彼は腹の底から声を出し怒鳴りつける。
見下ろす視線は矢のように鋭く、私に二言を許さない。
その威圧的な姿勢に、私は言葉を飲み込む。
すると彼は急いで膝まづき、自身の刀を数センチとはなさずかたわらに置く。
そして、私の怪我している右脚を無理矢理に掴んだのだ。


