獣だって見当たらない。
夜の不気味な冷気がむき出しの足を舐めあげて、私は悲鳴とともに震えあがった。
「これは、姫巫女の子」
「食ったらうめえぞぉぉぉ!」
大きく轟く狂いきった雄叫びに、森中がざわめきの声をあげる。
私はその声に、声にもならない声をあげ、殻に閉じこもるように身をかたく丸めた。
体中ががくがくと震え、幼子のようにわけもわからず甲高い悲鳴をあげる。
頭の中に共鳴するんだ。
夢で見た、あれと同じ声、同じ言葉。
これは、そう、あれとそっくり同じ……。
「食ってやるぅっ!」
さっきまでとは比べ物にならない、凍てつくような息吹が真正面から吹きかかる。
「イヤァッ!」
大声で叫ぶ。
それに重なるようにとどろく風のすさまじい唸り。
「おのれぇぇぇっ! ギャァァァァァァ!」


