私はかちゃりと箸をご飯茶碗の上にかけた。

この間から嫌な予感がまとりついて離れない。

「もう、食べないのか……?」

私の膝に下ろした手がびくりと反応する。

箸をとめたお父さんが私の方を向いていたんだ。

最近ほとんど無言に近い状態でご飯を食べていたのに、突然声を変えてきたからお父さんをまじまじと見てしまう。

お父さんは、まったく減ってない私のお茶碗を覗き込んで、年齢を思わせるしわを額に寄せた。

私はすぐに視線を外す。

「ダイエットなら、食べなさすぎは体によくないぞ」

お父さんの言葉は今、耳を掠めていくだけ。

当たり前だけど、もうこんなに時がたっていた。

写真立ての中のお母さんは時が止まったまま若いのに、お父さんだけ年をとっている。

たったひとりで……。