と同時に、乱麻くんの声が降る。

「僕の両親は、僕がまだ赤ん坊の頃、戦で死んだらしいよ、烏天狗の手でね」

無理矢理、他人事を装った物言いだった。

不器用で、強がりな男の子。

小刻みに波打つ声は、溢れ出そうな憎しみをギリギリのところで堰き止めているみたい。

私の方が辛くなって、喉になにかがつまったみたいで唾さえ飲み込めなくなっていた。

乱麻くんを見れずに、私は俯いてまだキズひとつないローファーを見る。

毎日普通で、高校生活に胸を躍らせていたおめでたい日々。

私、バカみたいだ……。

同じ今を生きているっていうのに、なにもかも違う。

乱麻くんも紫希も、重いものを抱えて生きている……。

今でも戦があって、理不尽に大切な人の命が奪われて、長すぎる年月をたったひとりで過ごして。

私には想像もつかない。

なんでこんなにも違うんだろう?