そして、なにかから逃げるように死にそうなくらい走って……。
そのあと、どうしたんだっけ?
もう気が付いたら、私の視界には見慣れた居間のつり下がっている蛍光灯が見えて、私の手をきつく握るお父さんが横に座っていたんだ。
それから、それはそれは長い時間叱られた。
『あんなにも森に行くなと言っただろう!』
『洞窟には絶対に近づくんじゃない!』
あの日のお父さんは、目尻をキラキラと輝かせてずっとずっと怒っていた。
私はそんなお父さんの怒りにわんわんと大泣きして、帰り道のことを思い出そうともしなかったんだ。
今考えればおかし過ぎる。
どうやって帰ってきた?
変な化物の声を聞いていないのなら、私は走っていったい何から逃げていたの?
適当に開いた教科書のページを爪の先でこつこつと叩く。
眉根に力を入れて必死に思い出そうとするけれど、出てこない。


