痛そうに、膝が震えている。
私は恐怖なんてかなぐり捨ててすっくと立ち上がる。
彼の手を取って走りだそうとした。
なのに、彼は烏天狗めがけ、力いっぱいに地を蹴りだしたのだ。
掴めなかった私の手。
矢のような速さで飛びだしていく彼。
ケガなんてものともせずに、鉄骨の山を駆けのぼっていく。
瞬きなんてしたら見失ってしまう。
目で追いきることができず、やっとしっかりとらえられたときにはもう、烏天狗の懐。
息を忘れて私は祈るように見上げる。
鞘からの引き抜きざま、刀が腕一本で振り切られる。
瞬時に飛びのく烏天狗。
それでも、深く斬りこむ着物の彼。
刃があと一寸で届く……!
紙一重の距離、ほんの一瞬。
祈る私の心臓は張り裂けそう。


