あまりに物静かに話す彼に、少しずつ身を引く私。
けれど、逃げる間もなく、彼の手が私へとのびてくる。
あっと声を漏らす。
でも、あっという間に、彼の細い指に絡められる私の顎。
無理矢理に顔を上向かせられ、漆黒の瞳にじっと見つめられる。
潤んだように煌めく、艶っぽい瞳。
私の瞳は揺れ動く。
決して放さない彼。
真意の見えない彼に、胸のざわつきが最高潮に達する。
そんな時、彼がやっと唇を薄く開いたんだ。
「ねぇ、俺のものにならない?」
するりと耳に入り込む言葉。
この人は、なにを考えているの……?
私は倒れ込むようにして彼を突き飛ばす。
「からかわないで。私はただの人間よ! ただの人間が無価値ならもう構わないでよ」


