「こいつは気に入ってくれたみたいだが、桜雨(さくらめ)さんはどう?」



イトバがそう言うと、その女の子はじ、っと俺を見つめ始めた
サクラメ、って言うんだな。珍しい名前だなー
なんてぼんやり考えていると、そのサクラメちゃんが、こくり、と頷いた
そして途切れ途切れに一言



「契、やく、せ、い、りつ」

「契やk「おー!よかったよかった!パーティ成立おめでとう!」」

「いや、あ「という訳で桜雨さん、自己紹介して自己紹介」

「え、てかお前が教えてくんないの?」



俺の言葉は誰にも聞こえてないようで。イトバに勧められサクラメちゃん(仮)は淡々と言った



「桜雨、なだ、れ、です。職、ぎょ、う、は、忍」

「サクラメ、ナダレ?」

「桜の雨と書いてさくらめ。雪が崩れると書いてなだれ。合わせて桜雨雪崩、らしい」



ほへー。漢字、っつーことは東の方出身なのか
ぼんやりと次の質問が浮かんだ

そして俺はこの質問をしたことを後程後悔する



「忍って忍者だよな?特技とかある感じ?」



たかが特技を聞いただけ。そう。ほんのコミュニケーションのつもりだった

桜雨ちゃんの右手が少し動いたかと思えば、彼女の顔の前で何かが構えられていた。松明の光を浴びて銀色に輝くそれは。頭の中で答えが弾き出される前に、雪崩はは表情一つ変えずに一言



「…皆、殺し」

「はーーーーい!!!!!!ストップ!!!!!!タイムタイムタイム!!!!!!ストオオオオオップ!!!!!!」

「はい質問は静かにお願いしまーす」

「皆殺しって何!?何!?」

「忍なんだから特技が皆殺しでもおかしくねーだろ」

「待って!暗殺とかならまだわかるよ!?五百歩くらい譲って!」



おかしい!皆殺し!?何この子怖い!前言撤回!怖い!怖いよ!



「てか皆殺し特技なんだーへー」

「は?お前知らなかったの?」

「は?名前と職業以外知らないんだけど」