呼んでる、何かが
私を呼んでいる。

駄目よ。そんなこと駄目

呼ばないで。ねえ



駄目、駄目
私は決意したの

この薄汚い世界を、私達から幸せを奪ったこの世界を消してやるって、そう決意したのよ。





誰にも止められないわ



そう、誰にも。

誰にもこの決意を止められてたまるものですか

私が今まで感じてきた屈辱を与え返してやるの。この世をおかしくしてしまったあの人達にね













だから止めないで。


私は今更、止まれないのよ



ねぇ、分かって
この気持ちを理解してよ

ねえ



止まれないの。止まれないのよ。










月の光に反射しぎらりと不気味に光る刃物を、静かに、そして確実に奴の首に突き立てた。

目の前で、ひっ、と意味もなく喉を鳴らした獲物



こんな状況であっても、…憎しみ以外、何も感じない。




でも私はそれでいいの

望むのは復讐という残酷且つ儚い願いだけれども、私はそれだけでいいのよ。



それだけが出来ればいいのよ。















曲げれない決意を込めた刃物を持つ腕に、深く深く力を与えた。






ぐさり、と鈍い音


激しく滴る水音


耳を裂くような甲高い悲鳴



それらは意味もなく重なり、私の心に刻み付けるよう、部屋中に響き渡った。













切り刻まれた肉と飛び散った血や臓器を見て、人など結局はこんなものなのね、とただ思う

同時に自分は人間ではなく、本当はもっと別の生き物なのかもしれないと思えて仕方がなかった。


















鏡を見つけた


その中の自分を見て、やっと気が付く。












私が、あの刃物の様に不気味に微笑んでいるということを。







END