モッヒーは自ら筆箱に横になる。


「ま、世の中こんなもんやて。政治家も革命家も、えらそうなこと言うても人間や。エロいことも考えるし、罵声も浴びせるやろ」


「ぼくをそうやって洗脳しようとしてるんじゃないか?」


小声で筆箱に詰問する。


「工藤、参考書かして」


比較的、仲のいい水沢が隣の席から手を伸ばす。


(参考書よりエロ本がいいんだけどな)


ぼくはしばらく水沢を見つめ、自分でも冷めた目をしながら、参考書を手渡す。


「やっぱりぼくが間違ってました」


「棒読みはやめろ棒読みは。間違いも正しいもあらへん。それが人間や。なんも恥じることもない。せやけど、守る必要もないんとちゃうか?」


「別に守らなくてもいいし」


「ほしたら今、お前以外の人間を消し去ってしもてもええか?」


「それは…」


ぼくは教室を見回す。


瞳ちゃと目が合った。瞳ちゃんは微笑んだ(キモ)。次に鈴木さんと目が合う(バカがうつる。こっち見んな)と、微笑んだ。


水沢の心は読まなくてもわかる。


モヒリアンから守る必要はないように感じたけど。


「保留で」


だってぼくには大切なあいつが…。