ボクはモヒリアン片手に、席に戻った。


「工藤くん、ここ解る?」


そんな声に我に返ると、塾で1番の成績の鈴木さんが。


「ここ、難しくって」


「ああ、この数式はここと、こっちを先に掛けてから計算しないと答えが出ないよ」


「さすが工藤くん」


鈴木さんが微笑んだ。


(ちょっとくらい解けたからって、いい気になんじゃねーよ、うすらタコ)


「えっ…」


「じゃ、こっちの問題は?」


「こ、これは…」


慌てふためいて、解答どころじゃない。


(バーカバカ。こんなのも解らないなんて。勉強くらい取り柄がないと、あんたになにが残るわけ?)


「…ごめん」


なぜかボクが謝ると、鈴木さんは私のほうこそごめん(バーカ)と言って去っていった。


そして極めつけは…。


「おい席につけ‼入試まであと半年だ‼なにがなんでも、俺がお前たちを合格させるからな‼」


熱血講師が熱弁を振るう。


が。


(1人か2人受かりゃ上等だな。惰性で受験なんて、世の中甘くねーんだよ。落ちろ。落ちろ落ちろ落ちろ)


「あの、お願いですから聞こえなくしてもらえませんか?」


ぼくは懇願した。