『ちょ、ち、近いんですけど………』
俺は後退りした。初対面で名前も知らないのに何か馴れ馴れしいし。
『あの、ちなみに名前は……?』と初歩的な事を聞くと何故か強く睨まれた。
『まず、あんたが名乗りなさいよ』
なんでこの人こんなに偉そうなんだろう。
多分我の強さはカシワギ以上だと思う。
『………ユウキ……ですけど、』
すると光のごとく、俺はガバッ!!と顔を両手で挟まれた。
『な…っ……』
何が起こったのか分からずにビックリして首が吊りそうになった。強い力で挟まれてる為、左右どちらにも動かず強制的に目が合ってる。
『あ………あんた………ユウキなの?』
真剣な顔で、その声は震えていた。
『そ、そうですけど…………
ってか手退けてください』
状況が全く飲み込めず、俺は混乱していた。
そしてゆっくりとその手が離れると、その人はクルッと俺に背を向けた。
『ちょっと付いてきて』
『え………』
『いいから来なさい』
何故か俺は逆らう事が出来ずに、そのまま駄菓子屋を出る事になった。
その背中は怒っているような、慌てているようなそんな感じ。歩くスピードはかなり速くて俺は後を追うのに精一杯だった。
『あの………』
俺は恐る恐る声をかけた。
ここの住人は強引な人ばっかりだ。いつも理由は後回しで俺は振り回される。