涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。



名残り惜しくおろしていた腰をあげて、手を繋いだ。


言葉はなくても、いいの。

本当のことはわからなくてもいいの。


胸がいっぱいで、今はいらない。


好きな人と、時間を忘れて一緒にいれたこと。

好きな人とのキスが、こんなにも幸せなことを知った。



「……あ、言い忘れよった!」


「ん?」


「サクの浴衣姿、めっちゃかわいい」



……なんて、無邪気に笑うから。

いろんなことは、やっぱり後回しでもいいかな。


この生まれて初めての幸福感に、今は浸っていたい。


星空の下で、私は、久しぶりに笑ったような気がした。