ぷくっと頬を膨らませる彼にまた笑った。
サラサラの黒髪と切れ長の目、それから薄い唇は小さな輪郭におさまっていて、そこらへんのアイドルより整った顔をしているのに。
それに相反した顔の使い方。この人顔の使い方へたくそだ。
「つかお前誰?ここら辺じゃ見らん顔やけど」
「今日引っ越して来たばっかやもん。星野咲夜って名前やけん」
サクヤ?
と、私の名前を呼ぶ彼は、やっぱり黙っていればかっこいいと思うのに。
性格が顔とマッチしていないと思う。
もっとこう、ほくそ笑んでるような感じにしていたらきっともっとかっこよく見えるのにと、もったいなく感じる。余計なお世話か。
「変な名前やな?俺は…ーーーー」
「圭都ー!?どこやーーっ!?」
ケイト、と呼ばれて言葉をやめた彼が「こっちー!!」と大きな声を出す。
圭都って。
「あんただって変な名前やん」
毛糸、みたいで。
「あ?うっせーな。ていうかさっきのやつ……」
「さっき?」
「空をゆびさしてたやつ……」
それがなん?
って聞こうとした時だった。
不意に階段の方から足音がしてそっちを見た。
……心臓が止まるかと思った。



