「小さい頃から思いよったんやけどさ、サクの名前ってめっちゃ羨ましいんやけど」
「なんで?」
「星野咲夜。星の咲く夜。いい名前すぎ」
サクヤって名前は、お母さんがつけてくれた。
陣痛が始まったのが夜で、痛くて痛くて仕方なかった時に見上げた空の星がすごく綺麗やったらしい。
「名前褒められたよってお母さんに言いたかったなぁ……」
「……?」
「お母さん死んだっちゃん。今年の2月に。ずっと私たちにつきまとって来てた前の夫を包丁で刺して、自分も。……いわゆる心中ってやつ」
おかしいでしょ?と笑うとレイが苦しそうな顔して、首を横に振った。
なんでレイが苦しそうにするとよ?
「……お母さんはなにも悪くなかった。私があいつを殺そうと包丁を持ったけん……お母さんが……」
お母さんが私をかばって……
お母さんがあいつを殺した。
そして、自分も。
だから……
「私があいつを殺そうやなんて思わんかったらお母さんやって死なずにすんだ!!私がお母さんを殺したっちゃん!!」
私の中の何かが壊れたように、いきなり溢れ出すいきどおり。
……止まらない。



