涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。



力強い手と、走る君の後ろ姿に胸がジンとして泣きたくなった。


パニックになってた私を助けてくれた。


胸が苦しくて、生きてるのに、生きた心地がしなかった。



「はぁはぁ……久しぶりに走ったわー……」



丘の前の階段まで走った私たち。


膝に手をおいて肩で息をしながらも私の手は離さずにいてくれる。



「大丈夫……?」


「それはこっちのセリフな。大丈夫や?」



ヘラッと疲れた顔で笑うレイに頷いて見せた。


レイが、走ってここまで連れて来てくれたけん。

疲れたけど、もう大丈夫。


乱れた浴衣を整えてから二人で丘に繋がる階段を登った。


遠くに花火が小さくすこしだけ見える。


音も微かで、胸の動悸もイヤな感じから優しいものへと変わっていく。