毎日笑っていた気がする。
毎日楽しくて楽しくて仕方なくて。
苦悩や、挫折、そんな言葉とは無縁の世界に無垢な心のまま、生きていた。
……今の私とは大違い。
目を閉じて空気を吸ったら、生きている感覚がした。
懐かしい自然の香りに胸が切なくなった気がする。
ーーその時だった。
「おわあああっ!?」
「えっ、きゃあ……っ!?」
ーードスン!!
いきなり、何かが私の座るベンチのすぐ後ろに落ちて来たような大きな音がした。
驚いた私は咄嗟に目を閉じて大きな声を出す。
なに、なに。一体なにが起こったの?
「いってぇ……」
恐る恐る後ろを振り向くとそこにいたのは、見た目年齢が私と同じ歳ぐらいの少年だった。
ベンチと木の間に身体を丸めて倒れ、痛そうに顔を歪ませている。
なんで男の子が……!?
打った頭と背中をさすりながら起き上がる彼が顔も上げた。
「だ、大丈夫……?」
背もたれに手を置いて声をかけると私のことを見る切れ長の目。
真っ黒な髪の毛には緑の葉が乗っていて思わず笑った。
「ふふっ」
「なんっ、笑うとか失礼なやつやな!」
「いや、ごめん……っ、でもおかしくて……!」



