松嶋に肘で腕をつつかれ、考え込んでいた俺は、

驚いて持っていたグラスを落としてしまった。





『きゃあっ！ちょっと何やって… 私フキン借りてくるわ！』





幸いグラスは割れなかったけれど、リビングに零れたビール。





「す、すみませんっ！！」




出されてたおしぼりで慌てて拭いていると、





フキンを借りに行った松嶋の代わりに奥さんが、フキンを持ってやって来た。





「ホントすみませんっ！」





フキンを受け取って拭こうとしたけれど、




『ここは私が片付けておくから、谷口さんはズボンにかかった方拭いてて？

台所に裕美がいるから裕美にタオルもらってきて拭いて頂戴。』






奥さんの言う通り、ビシャビシャのズボンを拭くために台所へとむかう





『………たら、許さないわよ。』




台所の入り口付近に立つ松嶋の声が聞こえて立ち止まってしまった。