――「すげー…」
すたぁんっと、空を切って矢が的に刺さる。
きりっと髪をポニーテールにまとめて、弓道着を着こなす女の先輩。
あの人、かっけーなぁ…。
道場の隅に、ナツメと二人で正座をしていた。
俺がじーっと見ていた先輩が、俺たちの方へ歩いてきた。
「こんにちわ、1年生だよね?私、部長の佐伯です。
ゆっくり見てってね!」
ニコ、と微笑み、また練習に戻っていく。
「今の先輩、綺麗だな」
「そうだな…、でも、俺はあっちの人のほうが好きだな」
「……お前、意外とムッツリなの?」
なんだよ、無口クール男かと思ったら、普通に男やん。
ナツメが指差した先に目を向ければ、ちょっとむっちりした先輩がいた。
「おーい、1年坊」
そう言いながら、近づいてくる男の先輩。
「お前すげー頭だな」
けらけらっと笑う先輩。
「俺っすか?」
金髪だもんな、そりゃそう思うか。
「まぁ、頭はいんだけど、俺の彼女ばっか見てねぇで、俺らのほうも見ろよな」
「彼女?」
先輩の視線の先は、あの美人の佐伯先輩。
「まじっすかぁ、狙おうと思ったのに」
まぁ、そんなことしたらあの人のハートを射抜く前に、俺がこの先輩に矢で射られそう。
「はっは、まぁ、好きに見てけや。ちょっと体験もするか?」
俺にはちょっと難しそうなんだけど、ナツメはどうすんだろ。
「…」
いつの間にか体育座りになって、寝ていた。
このやろぉーー!
さっきから全然しゃべんねーなとおもったら!