「プロポーズねぇ。
戸崎、ついに結婚するのか?」
「はい。今さら遅いってフラれるかもしれないですけど」
そうなのだ。
弱い俺は心のどこかでそれを恐れていた。
今の俺はFではない。
ただのサラリーマンだ。
かっこいいFが大好きだった唯ちゃんは、実は俺に幻滅してないかな、なんて思ったりして。
「それなら、プロポーズで彼女の心をグイッと掴まないとな!」
「はい!そのつもりです」
頑張らないと。
最近なぁなぁダメダメの俺。
プロポーズくらいかっこいいところを見せないと!
北野さんの言葉に励まされた。
だけど……
「俺が戸崎なら……
大きい劇場を貸しきって、彼女と一対一のワンマンライブをするかな」
「はぁ……」
何言ってんの、北野さん。
またまたいつもの悪ノリ?
「どんなライブするんですか?」
仕方なく聞くと、
「戸崎の十八番を歌う」
訳のわからないことを言う。
だから俺は言っていた。
「そんなことしたら、唯ちゃんが引きますよぉ。
それに俺、一人漫才くらいしか出来ないです」



