艶さんは正真正銘のドSだ。
その言葉には正直俺もビビってしまう。
だけど、戸崎さんは全く気にしていない様子。
むしろ、艶さんに反論するのを楽しんでいるようだった。
「そういえば蒼、慎吾知らねぇか?
昨夜から連絡がつかねぇんだよ」
「あぁ、アニメイトか漫喫じゃない?」
「あいつ、ふざけやがって。
俺が……
ーブチッ……
プープープー
戸崎さんは艶さんが話しているというのに、無理矢理電話を切ってしまった。
やっぱり滅茶苦茶な人だ。
「……艶さんのこと、尊敬してるんじゃないんですか?」
思わず聞いてしまった。
「うん。いろんな意味で」
彼は上機嫌に言う。
「えんどーさんなんて放っておけばいいって。
まずは中山が彼女さんと仲直りしなきゃね」
その言葉に再び目頭が熱くなった。
戸崎さん、やっぱりそのことを気にしてくれていたんだ。
俺、やっぱり戸崎さんの大ファンだ。
カッコイイ碧も、三枚目の戸崎さんも。
隣にいるのはただの戸崎さんなのに、俺は涙を拭っていた。