それからのやり取りは上の空だった。
ただぼーっと過ごし、兄ちゃんや女性と何となく会話を交わし、料亭を出た。
戸崎さんは馬鹿な先輩だった。
かっこよさの欠片なんて微塵もない。
だけど……
碧としての彼は違った。
あのカリスマを思わせるオーラ。
クールな口調。
全て感動してしまって。
そして、彼なりの優しさに涙が出た。
不意に携帯が振動する。
反射的に取り上げ、画面を見る。
……二度見した。
だって、着信の相手は戸崎さんだったのだ。
やばい!
何考えてんだろう!
あの人やっぱり馬鹿だ!
今はとても会いたくないのに!
心臓が止まりそう。
でも……
俺は通話ボタンを押していた。
見ないフリなんて出来なかった。
だって俺は、戸崎さんが大好きだから。



