「俺、カッコよく演奏出来ないです。
息も上がってしまうし、ギターだって見ないと弾けない……」
「そんなもんじゃねぇっすか?
初めから出来る奴なんていませんよ。
練習を重ねたら余裕も出てくると思います」
「碧さんは余裕なんですか?」
「正直、余裕ない時もあります。
カッコイイ俺じゃねーっすね。
でも、Fを好きでいてくれる人がいるから頑張れるんです。
みんなのおかげです」
その言葉一つ一つが胸に沁みこむ。
俺、気付かなかった。
戸崎さんは碧として活動しているとき、戯言ばかり言っているのかと思っていた。
だけど、根本的なものは変わらないと。
はぁー。
ますますファンになってしまう。
隣の女性は泣いていた。
まだ、彼の手を握ったまま。
兄ちゃんはすごいっすねと相槌を打つ。
その他、いくつか気になっていることを聞いた。
楽器の選び方の基準とか、ライブのこととか。
戸崎さんに聞いたこともあるが、適当に話題を逸らされる。
そんな質問に、やっぱり彼はきちんと答えてくれた。
そして、やっぱりすごい人だと再確認して胸がジーンとする。



