「碧さん!」
不意に隣の女性が黄色い声を上げる。
俺は思わず飛び上がった。
女性の頬はすでに濡れていて。
ひっくとべそをかきながら彼を見る。
ヤバい。
相当なファンだ。
いや……俺もかつてはそうだった。
戸崎さんが碧だと知った時、震えと涙が止まらなかった。
彼は顔色一つ変えず、女性を見る。
女性はハンカチを出し、目を覆った。
「ヤバい……す……好きです……」
堂々の告白だ。
「ありがとうございます」
静かに告げる彼。
そんな彼を見て、女性は手を差し伸べた。
「碧さん……握手してください」
差し出された手を、ゆっくり握る彼。
女性は小さな悲鳴を上げる。
そして、
「離さないで……今日だけ。
その手を離さないでください……」
泣きながらそう言った。



