「蒼、元気ねぇな。
今日は唯ちゃん来れねぇもんな」
俺は励まそうと思って、蒼の肩を叩く。
蒼は俺の手が触れると縮こまった。
「……怖い」
その声は震えている。
「間違えたらどうしよう。
……歌詞忘れたらどうしよう」
いつもの発作だ。
「深呼吸しろよ」
蒼にリラックスを促す。
こいつは、いつも開演前はこれだ。
蒼の緊張で俺たちまで生きた心地がしない。
だけど……
一旦始まれば、弱い蒼は消えている。
今だけだ。
今だけ、落ち着け。
「最後に、唯ちゃんにメールしたら?」
俺の言葉に黙って頷き、携帯を開ける蒼。
その瞬間、蒼の目が驚いたように開かれた。
「……え?
何ですか?」
取り乱した蒼は、携帯に耳を当てる。
その顔色はみるみる血の気を失っていく。
「……うそ……」
蒼の声は震えていた。
声だけでなく、全身で震えていた。
「緊急……帝王切開……」



