「唯ちゃん!
じゃあ、行ってくるね!」
蒼はいつもの笑みを浮かべてあたしに言う。
「戸崎。こんな時までお見舞いか?」
小野先生は目を細めて蒼を見る。
もう、小野先生とは数ヶ月の付き合いだ。
出産を機に、小野先生ともお別れになるのは少し寂しい。
だけど、二つの新しい命が待っている。
「はい。こんな時だからこそ来るんです」
蒼はそう言って、鞄を肩にかける。
「本当は唯ちゃんに来てほしかった。
でも、今は子供を守らないといけないです。
……俺、唯ちゃんがいるから頑張れるんです!」
ありがとう、蒼。
あたしもね、蒼だから頑張れる。
絶対元気な赤ちゃん産むよ。
「蒼、ライブ、頑張ってね」
あたしの言葉に、蒼は蒼らしい笑顔をくれる。
「うん!絶対成功させて帰ってくるから!」
ぎゅっと握られたあたしの手。
過酷な練習を積んだ蒼の手は、やっぱりボロボロで。
だけど、自信に満ち溢れて強かった。
「行ってきます!」
蒼は笑顔で病室から出ていった。



