何も言えない。
あれだけ碧のことを話すのが嫌な戸崎さん。
飄々として弱みを見せない戸崎さん。
そんな戸崎さんなのに……
「でも、唯ちゃんは違ったよ。
おかしな熱烈ファンだったけど、お馬鹿な戸崎と仲良くしてくれた。
お馬鹿な戸崎を嫌いにならず、応援してくれた。
だからさ、俺は頑張れたんだ。
俺らしく……」
そう言って、遠くを眺めたままふっと笑う戸崎さん。
いつもの、穏やかな笑顔だった。
信号が青になり、俺はアクセルを踏む。
何言ってんだよ、戸崎さん。
確かに戸崎さんの奥さんはそんな人だけど……
「俺もそうですよ?」
思わずこぼしていた。



