「ごめん、中山……」
戸崎さんはそう言って、助手席で外を眺めていた。
いつもは明るくうるさい戸崎さん。
そんな戸崎さんが沈黙している。
車の中には数年前のFのベストアルバムが流れていて。
戸崎さんなら絶対反応して発狂するはずなのに、スルーだ。
考え込んでいて、まるで耳に入っていない様子。
「……奥さん、きっと大丈夫ですよ」
そう告げると、慌てて姿勢を正して俺を見る戸崎さん。
「うん……だよね……」
そう言ったものの、明らかに元気がない。
戸崎さん、本当に奥さんが好きなんだな。
ラジオや雑誌ではめちゃくちゃなこと言うのに、戸崎さんには奥さんしかいないんだな。
俺はそんな戸崎さんが好きだ。



