だけど蒼はきょとんとしていて。
「いちファン?
……唯ちゃん、いまだにファンやってんの?」
ふざけたことを言う。
蒼、分かってないんだ!
あたしがどれだけFに痺れ、焦がれているかを!
時間が解決するような問題ではない。
あたしはずっとファンなんだ。
「唯ちゃん……」
蒼はあたしの肩をそっと掴み、身を乗り出す。
その綺麗な顔を間近で見て、ぼっと顔に火が灯る。
そして、頭の中に浮かんだ光景。
少しだるそうに立って、挑発するような目つきでこっちを見る碧。
はぁ……
くらくらして鼻血出そう。
だけど蒼はそんなあたしの胸の内なんて知るはずもない。
「お願いだよぉ。
ちゃんと作詞に唯ちゃんの名前載せるから!」
「そんな問題じゃない!!」
むしろ、載せて欲しくない!
あたしのせいでFが台無しになるから!
だけどね……
「唯ちゃんが作った歌なら、頑張って歌えそう」
そんなことを言われると何も言えなくなって。
「……あたしで……よければ……」
言葉につまりながらそう言ったあたしを見て、蒼は嬉しそうに笑った。