「唯ちゃん。お願いがあるんだけど……」
少し困った顔の蒼があたしに言った。
「何?」
思わず聞くと、
「超面倒かもしれない」
なんて言う蒼。
そんなことを言っても、あたしは何だってする。
だって、蒼は今、あたしと子供たちのために身を削って頑張ってくれているから!
そう思ったのだが……
「次の新曲、俺が作らないといけなくなった」
その言葉に、
「えぇ!?」
大声を出していた。
基本的にFの作詞作曲は優弥さんが担当だ。
蒼が言うには、優弥さんほどのセンスを持った人なんていない。
Fが売れたのも優弥さんがいるからだなんて言う。
「俺たちは優弥の指示に従ってればいいんだよ」
なんて言っていた。
だけど……
「優弥、妖怪とのコラボが忙しくて。
それに、ヒット曲出せば印税がすごいからって俺に押し付けたんだよぉ」
蒼はそんな言い方をするけど、これは優弥さんなりの優しさだ。
お金に困っている蒼に、いい仕事をくれた。
優弥さんの言う通り、上手くいったら印税はかなりのものだ。
身を削ってテレビやラジオに出るよりも、効率がいいかもしれない。
……上手くいったらだけど。