蒼を襲った相手が、麻衣子ちゃんの元カレだという証拠はない。
血迷ったMYのファンかもしれないし、関係ない人かもしれない。
でも、嫌な胸騒ぎがしたんだ。
「過労ですね」
救急の先生はあたしたちにそう告げた。
「怪我自体は急所を逸れていて、大したことありません。
……と言っても縫ってはいますが」
「そうですか……
ありがとうございます」
あたしは深く頭を下げる。
そんなあたしの隣で、麻衣子ちゃんは涙ぐんで震えていた。
「だーいじょうぶだってぇ!
なに?妖怪泣いてんの?」
蒼は麻衣子ちゃんにそう言って笑っていたが、麻衣子ちゃんは言い返す気力もなく。
床にぺたんと座った。
もちろん、あたしも蒼のことが心配だった。
でも、救急車を呼んだあと意識を取り戻した蒼は、予想以上に元気そうだったから。
だから酷いことにはなっていないと確信したんだ。
今回は大丈夫だった。
だけど……
次はないかもしれない。
蒼は狙われていた。
これは犯罪だから。



