抜群のタイミングだった。
早く家を出ないといけないと思っていたから。
そして、家を建てるつもりだったから。
だから、俺のために舞い込んできたチャンスだと思った。
だけど……
理想の土地がなくて。
いや、妥協してもいいのだが、今回のファン騒動が俺の心の中に引っかかっていて。
安全なところがいい。
俺がいても、何も言われないようなところがいいなんて思ってしまう。
「それなら、この土地しかありませんね」
山田さんは相変わらず厳しい顔で言った。
俺は差し出された資料を何気なく見た。
そして、体から血の気が引くのを感じた。
「土地の値段は確かにありえないほど高いです。
ですが、治安よし、教育よし、交通よし。
周りには有名人の家も多いです」
高いには、高いなりの理由がある。
唯ちゃんと子供が安心して暮らせる場所が絶対条件だ。
「買います」
俺は答えていた。
「お金は何とかします」