「唯ちゃん、大丈夫?」
産婦人科を出ると、心配そうにあたしをみる蒼。
「大丈夫。元気だよ」
そう言いながらも、あたしの身体は確実に変化を遂げていた。
その事実を知らされてから、はっきりそれに気付いた。
熱っぽい。
頭がくらくらする。
そして……
胃の奥からこみ上げてくるもの。
決して気分の良いものではないが、しっかり受け止めよう。
だって、お腹の中には二人の子供がいるから。
「唯ちゃん、俺、頑張ってご飯作るね」
「大丈夫だよ、そんなに酷くないし」
「年末の帰省は延期しよう」
「ううん、蒼の両親にも挨拶しなきゃ」
「甘えていいんだからね?」
「……ありがとう」
ありがとう、蒼。
不倫騒動があったりして、産婦人科なんかに来たくもなかったはずなのに。
こうやって、あたしを大切にしてくれて。
ずっとずっとあたしを好きでいてくれて。
感謝してもしきれない。
今のあたしが出来ることは、元気な子供を産むことだけ。
大好きなその手をぎゅっと握りしめた。