「マネージャーは?
それかタクシー呼びなよ」
蒼が冷めた声で言う。
すると、麻衣子ちゃんは
「あんた、ひがんでるんじゃね?」
ゲラゲラ笑う。
天使のMYは絶対にしない笑い方だ。
「あたしが紅白出て、あんたが出られない」
「出たくもないし」
「ブフッ……そんな強がり言って」
そう言って麻衣子ちゃんは煙草を取り出し、蒼が無言でそれを取り上げる。
すると、麻衣子ちゃんはすごい勢いで蒼を睨みつけ、どたどたと足音を立てて家から出ていった。
まるで嵐の後のようだった。
呆然と立つ蒼とあたしの間には、冷たい風が吹いた。
蒼、きっと怒ってる。
なんて言葉をかければいいんだろう。
だけど、
「唯ちゃん、今日は賢一にご飯作ってもらお」
蒼はいつもの笑顔でそう言った。
まるで、何事もなかったかのように。