麻衣子ちゃんと優弥さんは、なかなか部屋から出てこなかった。
「断ればいいのに、唯ちゃん」
蒼は何度もあたしに言った。
だから思わず聞いてしまった。
「蒼こそ麻衣子ちゃんに厳しくして。
そんなに嫌い?」
蒼はあたしから目を逸らし、口を噤んだ。
そして……
「うん。デリカシーない人、苦手」
静かにそう言った。
初めて聞いた。
蒼が人のことを悪く言うなんて。
後輩の中山さんにどれだけ文句を言われても、いつも笑っていた蒼。
中山さんだけではない。
同級生にも、はじめ敵対心を抱いていた隆太にも、こんな態度を取ったことなんてなかった。
蒼も人間だから、好き嫌いがあるんだな。
初めてそう思った。
そして、そんな嫌いな人と一緒に生活させるなんて……
「麻衣子ちゃんには断ろう」
あたしはそう言っていた。
蒼は驚いたようにあたしを見る。
「しっかり言わなきゃ!」