その後、あたしは麻衣子ちゃんに小さなカフェに引きずり込まれ、色んな話を聞いた。
田舎からギター一つで東京に出てきたこと。
家は何とか契約出来たけど、最近まではバイトでギリギリだったこと。
田舎では、ソロではなくてバンドを組んでいたこと。
「はじめは無謀だと思ったけど、その頃のほうが楽だった」
麻衣子ちゃんはそう言った。
「あたしはさ、自分のスタンスで、自分の好きな音楽をやりたかった。
だけど、世間の求めるイメージは違うよね」
その言葉を聞いたのは初めてではない。
蒼も何度かそんなことを言って落ち込んでいた。
そんな蒼を見ているから、麻衣子ちゃんも他人事だとは思えない。
あたしはただ、
「知り合いにもいるよ、そんな人」
そう言うことしか出来なかった。



