平凡でとりえもない、ごく普通のあたし。
だけどあたしには、不思議な力がある。
そう思ってしまう出来事だった。
街中に流れる、クリスマスソング。
肩を寄せ合うカップル。
今日はイブだというのに、蒼と過ごす気にならなかった。
あたしの心の中のもやもやはあれからも続き、一人になりたい気持ちが膨れ上がった。
不倫はしていないとはいえ、早川さんと肩を寄せ合って歩いた。
それが心の奥底に傷を残している?
いや、蒼とあたしの釣り合わなさのせい?
はっきりとした原因は分からないままだ。
だけど、あたしは蒼を避けるように街に出て、ただブラブラと放浪した。
蒼といえば……
「唯ちゃんが用事あるなら、俺は大学の友達と会ってくるよ」
笑顔でそう言う。
あたしの気持ちに気付いていないのか……
いや、気付いていないふりをしているのだろう。
この原因不明のモヤモヤも、時間が解決してくれると信じている。
だって……
だってあたしはやっぱり蒼が好きだから。