そうなんだ。

すごいね、蒼。

そんなことしてくれる人、なかなかいないよ?




蒼は本当に才能がある。

人を惹きつけて離さない才能が。






「だから、専務と約束したんだ。

今年は絶対に一級取るし、家も建てる!

唯ちゃん、夢のマイホームだよ?」




蒼は満面の笑みであたしを見た。

その笑顔を見てホッとした。





正直、蒼が心配だった。

あれだけ楽しんで行っていて、先輩後輩にも慕われている会社を退職するなんて。

蒼のやる気と夢がぽきっと折れてしまうのではないかと思った。





「でもね、唯ちゃん。

みんな酷いんだよ?」



「?」



「俺のデスクに、悪意たっぷりのいたずらがしてあったんだよぉ」



「なに?不倫とか整形とか書かれてた?」




わざとそう言うと、ぷーっと頰を膨らます蒼。

その仕草にきゅんとする。




「不倫も整形も違うしぃッ!!

唯ちゃんがそんなこと言わないでよぉ!」




むくれる蒼を見て、あたしは笑っていた。




子供っぽくて、素直で、無邪気な蒼。

あたしの大好きな蒼。

こんな蒼の笑顔を再び見ることが出来て良かった。

そして、蒼と一緒にいることが出来て良かった。

人生は山あり谷ありだけど、二人で乗り越えていこうね。

……うん、きっとあたしたちなら大丈夫。