そのまま、優弥さんのスタジオ兼自宅に帰った。

二人の子供は既に寝ていて、紅さんは優しい笑みを浮かべて二人に布団をかけた。

そんな紅さんの横顔を見て、蒼もこんな顔で子供を見るのかな、なんて思った。

きっと、優しいパパになるんだろう。








「何とか精神的に安定したみたいだね」




紅さんはそう言って、いい香りのするハーブティーを出してくれる。




「……?」




言葉の意味が分からず黙っていると、紅さんは柔らかに微笑んで教えてくれた。




「蒼、メンタル弱いでしょ?

不倫報道が出た瞬間に、ライブは無理だと思ったの」



「え?」




確かに蒼はメンタルが弱い……というより、ヘタレだ。

優弥さんのスパルタ練習に弱音を吐いたり落ち込んだりしていることはある。

だけど……





「蒼が碧として失敗したところなんて見たことがないです」




あたしは思わず声を張り上げていた。





……そうなのだ。

蒼はヘタレで、そして時々抜けてたり大失敗をしたりするけど、碧は完璧。

まさしく、何かが乗り移ったかのように。