彼はふっと力が抜けたように笑った。
そんな彼を見て、
「碧!」
人々は口々に叫ぶ。
そんな人々を、彼は少しだけ泣きそうな顔で見回した。
そして、口元をぎゅっと引き締める。
「そういうことだから……」
その顔は、いつもの碧に戻っていた。
不敵で、キケンで、そして妖艶で。
自信に満ちて、冷徹で。
「今日は盛り上がるぞ」
その声に、会場中が湧いた。
不倫なんてしていないから、騒動に触れない選択肢だってあった。
だけど、彼は敢えてそれに触れ、頭を下げた。
本当に真面目で不器用なんだから。
そんな蒼を知っていることに、優越感さえ覚えた。