「遠藤様!」
蒼のオフィスに着くなり、青ざめた社員に呼ばれた。
スタジオの打ち合わせで数回会ったことがある。
蒼の上司だ。
一見コワモテにも見えるその顔は、ただ心配そうに歪んでいる。
そして、蒼のデスクの周りがやたらざわついていた。
「戸崎はすでに退社しました。
……辞表を出して」
「はぁ!?」
何やってんだ、あの馬鹿。
一人で全部の責任を取ろうと思って。
こういう時は俺に相談しろって言ってるだろうが!
「……戸崎の不倫相手は?」
そう聞くと、彼の顔がくしゃくしゃになる。
「悪阻が酷いと……早退しています」
「そうですか……」
それなら、ここにはもう用事がねぇ。
「ありがとうございました」
頭を下げて去ろうとした時……
「艶さん!!」
例の蒼の大ファンだという男性に呼び止められた。
彼は真っ赤な顔に涙を浮かべ、ガクガク震えながら俺を見ていた。
そして彼は、泣きそうな声でこう告げた。
「お話があります」



