結局、蒼に絡みつく早川さんを無理矢理剥がして、後輩たちは去っていった。

彼らは何も悪くないのに、何度もあたしに頭を下げて。

だけど、早川さんだけは何も言わなかった。

ひたすら蒼を甘い目で見つめていた。

しらふでそんなことが出来る早川さんはすごい。

一歩間違えば不倫なのに。

いや……

彼女にとって、不倫なんて怖いものではないのだろう。







「ごめんね、唯ちゃん」




あたしに謝る蒼。

そんな謝罪はいらない。

だけど、もう少し毅然とした態度をとってほしい。




蒼、早川さんに興味ないんだよね?

じゃ、もっとはっきり断ってよ。

嫌なら嫌って言ってよ。

じゃないと、あたしはまた不安になる。

誰に対しても優しい蒼。

だけど、その優しさが仇になることだってあるんだ。








何もないと信じたい。

だけど、蒼と早川さんは同じ職場だ。

気にしないようにと思っても、気にしてしまう。

どうか早川さんが蒼を諦めてくれますように。

そして、蒼はあたしを好きでいてくれますように。




あたしは蒼に背を向けたまま震えていた。