「戸崎さんって優しいし穏やかだし、お馬鹿でムードメーカーだし。
何だか超イメージ違ってぇ。
理想の彼氏って感じ?」
理想の彼氏?
……理想の旦那ではなく?
ここで、なんとなく分かってしまった。
早川さんは本気なのだ。
既婚者の彼女になるつもりなんだ。
そんなの嫌だ!!
それに、早川さんは紛れもなく碧でなく、蒼を好んでいる。
昔から本当の自分を見て欲しかった蒼にとって……
「でも俺、結婚してるから」
蒼は静かにそう言った。
マイナス思考のループに陥っていたあたしは、思わず蒼を見る。
すると、蒼はあたしを見て少しだけ微笑む。
あぁ、蒼には全てお見通しなんだ。
あたしの醜い嫉妬心を。
「戸崎さんって、なんでそんなに奥さんが好きなんですか?」
信じられないとでも言わんばかりの口調で話す早川さん。
そんな早川さんをちらっと見て笑う蒼。
「だって、唯ちゃんは俺の全部を好きって言ってくれるんだよ?」



