「戸崎さんっ!
案、まとまりましたぁ?」
彼女は甘い声でそう言って、蒼の隣に座る。
妻のあたしがいるというのに、あたしには見向きもしない。
それに蒼だって、
「なかなかだよ。難しいね」
なんて言う始末。
そして、じーっと二人を見つめるあたしの視線に気付き、
「あ、唯ちゃん。
今月からうちのフロアに異動してきた早川さんだよ」
と紹介する。
お世話になっていますと頭を下げるあたしを見た早川さんの目は、もはや天使の目ではなかった。
蒼とずっと一緒にいたから、蒼のことが気になる女性にたくさん会ってきた。
彼女たちは大抵こんな目をあたしに向ける。
ーあたしのほうがいい女じゃん。
なんていう。



