「碧は俺じゃない。

俺は、あんな酷いこと思わない。

だけどね……世間は違うんだ」




あたしは蒼に何を言わせているんだろう。

そんなこと、あたしが一番知ってるのに。




「世間の求めるFは、どこか冷めていて、ワイルドで。

TODAYのMVは演技。

鼻の下を伸ばしている間抜けな碧なんて見たくない」




分かっているのに、どうして分かれなかったの?

蒼を信じれなかったの?

蒼はこんなにあたしを愛してくれているのに。





「唯ちゃん」




名前を呼ばれてはっと我に返った。




「戸崎蒼は唯ちゃんだけのもの。

唯ちゃんに心底惚れている、お馬鹿なただの男だよ」




だから、信じなきゃ。

これ以上蒼が悲しまなくて済むように。

そして、ファンの求める碧を演じきれるように。


あたしもね、蒼がいないともう生きられない。