「今日も遅くなってごめんねぇ」




帰り道、あたしにそう言う蒼。

時計を見ると、時刻は一時前を指している。

今は学生とは違う。

早寝早起きが基本の社会人だ。

そんななかで、蒼はいつもこんな極限の生活を続けている。

そんな蒼を尊敬する。




だけど……





「また人気者になっちゃったね」




そんな可愛げのないことを言ってしまうあたし。



不安なんだ。

せっかく落ち着いたと思ったのに、また蒼の周りに人が集まる生活が始まるなんて。





蒼は黙ってあたしの手をぎゅっと握る。




「俺は唯ちゃんだけのものだよ」




蒼はいつもそう言ってあたしを安心させてくれる。

どれだけかっこよくても、才能があっても、蒼はあたしのそばを離れない。

分かっているから信じているよ。




「ライブ、頑張ってね」




あたしの言葉に、蒼は満面の笑みをくれた。