ー唯sideー






次の日……。






「ふぇーん、唯ちゃん」




朝から蒼の泣き声が響いた。

蒼はダイニングテーブルに座り、食事も摂らずに苦い顔をしている。





「会社行きたくないよぉ」



「なんで?」




聞かなくても大体理由は分かっている。




「だって、北野さんと中山の前でやっちゃったんだよ?

羞恥プレイだよ?

顔合わせられないよ?」





そうなのだ。

蒼はプライベートの友人、特に会社の同僚にFの活動を見られるのを酷く嫌がる。

Fのことは決して嫌ではないのだが、普段の性格がこれだから、火を噴くほど恥ずかしいんだとか。

蒼の気持ちも分からないこともない。

だけど、そんな蒼も含め、あたしは蒼が好きだ。






「蒼、頑張って会社行けたら、帰ってきたらぎゅっとしてあげる」



「えっ!」




蒼の顔がぱっと明るくなる。




「ぎゅっとしてあげるし、今日は蒼の大好きなハンバーグとフルーツパフェ作って待ってる」



「唯ちゃん」




甘えた顔であたしを見る蒼の手が伸びる。

出来ることなら今すぐぎゅっとしたい。



でも、




「帰ってくるまでお預けだよ」




そう言うと、




「うん!」




蒼はいつもの太陽みたいな笑顔で笑った。

胸が熱くなって、きゅんと甘い音を立てた。







あたしは、こんな甘くて無邪気な蒼が大好き。

そして、クールでかっこいい碧も大好き。

蒼、あたしはあなたの全てから離れられない。