それにしても驚いた。
職場ではFの話をするだけで逃げる戸崎。
だから、今日も大して期待していなかった。
生でFの三人を見て話が出来ればラッキーだと思っていたくらいだ。
「中山、いつまで泣いてんだ?」
俺はまだ涙を流す中山に聞く。
「だって……やっぱり感動して……」
中山はそう言ってティッシュを出して鼻をかんだ。
「中山、それ、泣き落としだぞ?」
「知ってます……
戸崎さん、俺が泣くと何でも言うこと聞くから……」
「だから泣いたのか?」
「そんなはずありません!
でも……」
俺は中山を見て、小さく笑った。
どんなに罵られても、馬鹿にされても、戸崎は中山に優しい。
中山に泣かれて、職場では必死で封じ込めようとしているとこをしてしまうなんて。
明日、頑張っている戸崎にケーキでも買っていってあげようかな。