「関西来た時は連絡しぃや」
ボーカリストはそう言って、蒼にアドレスを書いた紙を渡した。
蒼は真っ赤になりながらそれを受け取り、大切そうに財布にしまう。
そして、深々とお辞儀して会場を後にした。
始終静かな蒼。
あたしは、そんな蒼の手をぎゅっと握り思いを巡らせた。
碧のファンは多い。
数えきれないほど。
そんなファンたちは、今日の蒼のように碧に思いを巡らせ、そして感動して涙してしまう。
今まで、そんなファンはたくさんいた。
亜美もそうだし、恐らく中山さんも。
蒼は、そんなファンたちを決して邪険に扱わない。
今日のボーカリストと同じだった。
「俺も頑張らなきゃ」
蒼は静かにそう言った。
「馬鹿fiveに恥じないように。
負けないように」
うん、あたしも応援している。
そして、待ってる。
あの素晴らしいステージが、さらにレベルアップして帰ってくることを。
あたしは蒼の妻。
そして、碧のファン。
あたしも碧に焦がれ、そして涙を流す。